
おきまりの振る舞いは、深く考えずに反射的に出てくる。周囲の人も予見しやすいから、安心する。
1票の格差を2倍以内にするために進行中の衆院の小選挙区を「10増10減」する作業に自民党で異論が広がり、代替策として全体の定数増も「選択肢」と発言した世耕弘成・同党参院幹事長は、あちこちでおきまりの批判にさらされた。
あるメディアの言葉を借りれば「その感覚に絶句」するほど、「議員を増やす」ことへの拒否反応は強い。反面、「身を切る改革」は、有権者の受けもいい。
どちらも「過度な単純化」「善悪、正邪、優劣などの強い感情」「新たな証拠や経験に出会っても変容しにくい」といったステレオタイプの特徴(日本大百科全書)に合致しそうだ。
米国のジャーナリスト、ウォルター・リップマンは100年前に刊行した『世論』(掛川トミ子訳、岩波文庫)で、ステレオタイプ、日本語なら「紋切り型」について、「見てから定義しないで、定義してから見る」態度だと説明した。
属する社会や文化の中でおきまりの考えに乗った方が労力を節約でき、居場所も失わない。だから、人はそれに固執するのだと。
フランスの作家ギュスターブ・フローベールには、死後30年を経て『世論』の12年前に世に出た『紋切型辞典』(小倉孝誠訳、岩波文庫)がある。1000以上の言葉を皮肉たっぷりに“再定義”した奇書だ。
<愚か者>は「あなたと同じ考えを持たないひと」。<代議士>は「栄光の極み」だが「お
「代議士は何もしない」から減らすのは善で、増やせと唱えるのは「愚か者」である――。紋切り型でいるのは、とても楽だ。
からの記事と詳細 ( 「10増10減」巡る議論、ステレオタイプな見方はやめよう - 読売新聞 )
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