
連載「住まいのかたち」③
白檀(びゃくだん)のお香がかおるリビングに、モノトーン基調の家具や置物が並ぶ。畳にフローリングマットを貼った「和モダン」ダイニングには、新調した障子越しに柔らかい日光が差し込む。
「ちょっとした工夫で、雰囲気が変わるんですよね」。鹿熊茉夕(かくままゆ)さん(29)はそう言ってほほえんだ。
どこにでもあるような空き家だったこの家を夫の慶充(よしみつ)さん(34)とDIYでリノベーションし、暮らし始めてからもうすぐ3年。話し合いながら「自分色に染めた」住まいは、愛着のあるマイホームになった。
◇
以前の家は、都心の最寄り駅から歩いて8分の賃貸マンション。家賃を節約しようと、交際していた慶充さんと2人で借りた。職場へ通うのに便利で、休みの日は近所のおしゃれな店を散策できる。「ここに住み続けたい」と思っていた。
ただ、6畳と4畳半の2Kは収納が少ない。食器は数枚を使い回すしかない。両親が来ても客間はない。結婚が決まると窮屈に感じ始めた。いずれは戸建て、という思いに気付いた。
富山の実家は両親が建てた戸建てだった。2階の子ども部屋にジャングルジムやおもちゃを広げ、きょうだい3人で遊んだ。年末は祖父母が住む築100年の家に親族が集まり、年を越すのが恒例だった。
富山に残った姉や友人は結婚後、当然のようにマイホームを建てた。でも都心は地価が高い。共働きでも戸建てを持つのは難しかった。諦めかけていた4年ほど前、空き家になっていた慶充さんの祖母の家の売却話が舞い込んできた。
連載「住まいのかたち」
2021年もステイホームの暮らしが続きました。多くの時間を過ごす「住まい」とは、私たちにとってどういう存在なのか。様々な「家」を舞台に、そこに住む人たちの姿を通して豊かな暮らしのヒントを探ります。
「他人に売るなら、私たちが住もう」。旅行に向かう飛行機の中でひらめき、詳しい場所も知らないまま慶充さんに相談すると、すぐに内覧日が決まった。
ハンマーとバールでたたき割った
「よくある一軒家。全然タイ…
からの記事と詳細 ( 第一印象はタイプじゃなかった 空き家をわが家へ、2人で挑むDIY - 朝日新聞デジタル )
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