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Saturday, November 13, 2021

ヘイトはどこから 米国社会「ステレオタイプ」のわな | 米国社会のリアル | 樋口博子 - 毎日新聞

 「アジア系こそ、私たち黒人を差別していると日々感じる」

 動画を通して浮き彫りとなったのも、お互いの無知や偏見でした。公民権運動から半世紀以上経過した現在も、社会が作り出すゆがんだステレオタイプで互いを警戒したり、疑心を持って相手を見たりといった「壁」が存在することを実感させられました。

公民権運動の指導者、マーチン・ルーサー・キング牧師
公民権運動の指導者、マーチン・ルーサー・キング牧師

 また動画では、かつて都市部の黒人たちがほぼ独占していた美容用品産業にアジア系が食い込み、シェアを奪っていった例なども説明されていました。こうした黒人側からの視点を知るアジア系は、そう多くはないでしょう。

エスニックスタディーズは何をもたらすか

 そんな中、カリフォルニア州が決断したのが、エスニックスタディーズの義務教育化です。子供たちは、米国に暮らす「アジア系」「先住民」「黒人」「ラテン系」について、それぞれの視点から歴史や文化を学びます。

 ただ、アジア系だけでもカリフォルニア州には何十もの民族が存在し、それぞれ移民のタイミングも、言語も文化も異なります。それをどう体系立て、お互いの差異にも触れつつ教えていくのか、教員の育成や教科書づくりなど課題も残ります。

 個人的にはエスニックスタディーズの対象に「白人」が入っていないのも気になります。彼らは現在、米国で人口が最も多いマジョリティーですが「白人は他人種を差別するもの」などというステレオタイプがあるのも確かであり、偏見や格差に苦しむ人もいるからです。白人社会にもさまざまな民族や文化、宗教が存在するのです。

 また、それぞれの人種の歴史を体系立てて学ぶことは、米国史を非白人の視点から再考することになります。「差別の歴史」や「白人入植者が非白人を排除してきた歴史」にも深く触れることになり、米国人としてのアイデンティティーを揺るがすことにもなるでしょう。そのため保守層を中心に「白人が悪者に仕立て上げられてしまう」といった抵抗の声もあります。

新たな多人種国家像を

 それでもカリフォルニア州は、ヘイトクライム対策を刑罰化だけに頼るのではなく、教育によって人々の意識変容を促す方向に動き出しました。それは、お互いのことをよく知ることが、偏見や誤解の解消につながり、憎悪からの脱却にもつながると考えるからです。

 このことが今後、米国全体にも前向きなインパクトを与え、多人種・多文化国家としての新たなあり方を提示する光となることを期待します。

 <「米国社会のリアル」は随時掲載します>

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